なぜRyosukal?リョスカル?
「リョーシュ」「ブリョーシュ」「ヨーク」「オスカル」「ヨー」「リィオースゥケー」「ディオ」、、、以上の単語はイタリア語ではない。日本語のはずだ、少なくとも僕の出会ったイタリア人にとっては。「名前は?」「亮介、リョウって呼んでくれてもいいぜ。」ここまでは、日本でもよくある会話である。けれど、イタリアではこの先が長い。必ず、「Come??」(何だって?)という言葉が帰ってくるのだ。「R,Y,O,S,U,K,Eでリョウスケだよ」と長くなるだろう説明におびえながら、僕は言う。そして僕らのがまんくらべが始まる、、、
「ヨースケ?」
「いや、リョースケだ、リョウ! 」
「ディオスゥケ?」
「リョウ!」
「ああ、O.K. ディオだろディオ」
「、、、、(ディオって神様じゃん!)」
そもそも、標準イタリア語には日本語の「リ」と同じ発音が存在しない。「標準」と書いたのは数知れないバリエーションを持つイタリアの地方語の中には同じ発音があるかもしれないからだ。イタリア語にもRとLの発音はもちろんあるけれど、どうやら日本語の「リ」はイタリア語の「Ri」「 Li」の丁度中間の音に当たるらしい。ヘボン式のローマ字「RYO」はイタリア語には存在しない綴りで、これ又彼等には発音のしようがない。聴いたことのない外国語の発音は聞きのがされるか、それに近い母国語の発音に置き換えられしまうのが音声言語学的常識のようだ、つまり僕の日本語の名前がイタリア人の耳に届き、イタリア人の神経を通過し、イタリア人の脳にたどり着いた時、それはもうすでに日本語ではなくイタリア語風に転換されてしまっているという現象が生じる。
外国語を学んだことのある、もしくは音への感覚が鋭いイタリア人ならば何とか最後には僕の名前を習得することが出来る。けれども、そんな二人とも満足感に包まれる幸せな結末は数えるほどしかない。結果、最初にあげた僕の名前の怪しげなイタリア語バージョンが数多く生まれてきた。
今回の渡航の直前、イタリアのプロバイダーで新しいメールアドレスを作る機会に恵まれた。hotmail以外で自分だけのアドレスを持つのは初めてだったから、よく考えて見ようと思った。1.イタリア人にも分かりやすいもの。2.iida122@など既存のアドレス+番号ではなく、世界で唯一のアドレス3.自分の名前と関係のあるもの、、、
一生懸命考えたあげく、「オスカル?」と僕の名前を聞き取るイタリア人が幾人か居たことをおもいだした。しかし、「オスカル」と言えばベルサイユのバラだし、僕の柄ではない。そこで、亮介のリョを付け加え、Ryosukalとなった。
以上が、僕の新しいあだ名の由来である。が、誰も僕をリョスカルとは呼ばないし、僕も呼んで貰おうとはおもわない。あだ名は「ヤマオ」で十分だ。それに、いくら面倒くさくても自己紹介は自分の本当の名前でしたいから。
こうして今日も又、「ヨーじゃなくてリョウ! 」と僕の苦労は続くのである。 (後記。最近は諦めて、リオと名乗る事にしました。"RIO"は河と言う意味のようで、なかなか良いでしょう?)
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